チェロと歌で拓く新たな世界
えっ、チェロとテノールだけのコンサート? ピアノ伴奏もなし!? そんな一風変わった組合せによるコンサートが開催される。
チェロの長谷川陽子がテノールの錦織健とともに「やったことのないジャンルをふたりで開拓しよう」とチャレンジするのが、今回のチェロと歌のデュエット。曲はストラデルラ「教会のアリア」、ボンチーニ「お前を讃える栄光のために」、滝廉太郎「荒城の月」、オッフェンバック「ホフマンの舟歌」といった名曲の数々。「今回のために新たに編曲されたシンプルでスタイリッシュなサウンド」(錦織)で演奏されるという。もし、ピアノ伴奏が入っていればチェロとテノールがそれぞれ交互に主役を務めるようなプログラムになっていただろうが、なにしろチェロとテノールしかいないのだから、どんな「デュエット」になるのか、容易に想像がつかない。
もともとチェロは人間の声に近いといわれる楽器である。のびやかで暖かみのある音色は、喜怒哀楽さまざまな感情表現を可能とする。一方で、オーケストラでは低音を受け持ってアンサンブルを下から支える役割も果たす。主役にもなれれば、脇役にもなれるという万能性がこの楽器の強みだろうか。となれば、長谷川陽子の八面六臂の活躍は必定。錦織健の甘美で華のある歌唱とともに、新たな音の世界を作り出してくれることだろう。
トークもふんだんにさしはさまれるという。リラックスして楽しみたい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ 2016年10月号から)
10/22(土)13:30 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp