シェイクスピアの悲劇をプロコフィエフの劇的音楽とバレエで体感
シェイクスピア没後400年にあたる本年、新国立劇場バレエ団は、新シーズンのオープニングとしてケネス・マクミラン振付『ロメオとジュリエット』を上演する。
プロコフィエフの音楽は、緻密に構成されており、原作のページをめくるように次々と場面が展開していく。音を聴いているだけでも、様々なシーンが目に浮かぶほどに雄弁だ。とりわけ、見事なのは、若い恋人たちの軽やかさ、疾走感と、彼らを取り囲む旧弊で重々しい世界、相反する二つの世界の描き分け。対立する二つの家族に重くのしかかる宿命、そこに清々しい一陣の風を吹き込みながらも、運命に翻弄され、のみ込まれていく恋人たちの姿が浮かび上がってくる。
出会いから死までわずか1週間足らず、ただ一度の恋にすべてを賭け、人生を駆け抜けていく恋人たちの物語は、あまたの振付家によってバレエ化されているが、その中でも頂点の一つとされるのが、今回上演されるマクミラン版だ。その魅力は生き生きとした感情表現。長大なシェイクスピアのセリフが語られることはないのに、ダンサーの全身からは、登場人物たちの心の声がほとばしり、私たち観客の心を強く揺さぶるのだ。恋人たちの高鳴る胸の鼓動や、震えるような甘い囁き合い、身を切るような絶望を、観客もまた自身の身体を通じて体験することができるほどに。
主役はもちろん、色濃いキャラクターをダンサーたちがどう造形し、ドラマを生成していくのか、キャストによる見比べもまた楽しい。
文:守山実花
(ぶらあぼ 2016年8月号から)
【出演者変更】
10月30日(日)公演にロメオ役で出演を予定していた井澤駿は、怪我のため出演できなくなりました。
代わりまして、ワディム・ムンタギロフが出演いたします。
詳細は下記、新国立劇場バレエ団のホームページでご確認ください。
10/29(土)〜11/5(土) 新国立劇場 オペラパレス
問:新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999
http://www.nntt.jac.go.jp/ballet