ショスタコーヴィチの対照的な2つの交響曲を聴く
神奈川フィルハーモニー管弦楽団が、それぞれの指揮者の個性が滲む、ショスタコーヴィチの交響曲を軸とした2つのステージで、本格的な夏の訪れを告げる。
まずは、常任指揮者を務める川瀬賢太郎のタクトによる、名古屋フィルハーモニー交響楽団と合同のスペシャル・ジョイント・コンサート(6/25)。2014年に神奈川フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者に就任して以降、その溌剌とした音楽創りが、広く音楽ファンの支持を得ている川瀬が、名古屋フィルの指揮者も兼ねていることから、“夢の共演”が実現した。
ここでは、重量級の傑作・第7番「レニングラード」を取り上げる。ナチス・ドイツとのレニングラード(現・サンクトペテルブルク)攻防戦を題材にファシズムとの闘争を描くと共に、スターリン批判の思いも込めたとされる複層的な作品。若きマエストロが2つのオーケストラの総勢130人と共に紡ぐ、圧倒的な迫力のサウンドでぜひ体感したい。ピアノの菊池洋子を独奏に据えての、モーツァルトの協奏曲第21番も楽しみだ。
そして、もうひとつが、名匠・高関健を指揮台に迎えての交響曲第15番(7/28)。ショスタコーヴィチ最後の交響曲は、古典の形式に立ち返る一方、作曲家が自らの生涯を振り返る内省的な場面や、室内楽的な手法も目立つだけに、大胆かつ繊細な高関の音楽創りがいっそう映えるはず。さらに、この交響曲にも引用されているロッシーニの歌劇《ウィリアム・テル》序曲と、ソロ・コンサートマスターの石田泰尚の独奏によるバーバーの詩情豊かな協奏曲も披露される。
文:笹田和人
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年6月号から)
名古屋フィル + 神奈川フィル スペシャル・ジョイント・コンサート
6/25(土)14:00 横浜みなとみらいホール
問:神奈川芸術協会045-453-5080
第320回 定期演奏会
7/28(木)19:00 横浜みなとみらいホール
問:神奈川フィル・チケットサービス045-226-5107
http://www.kanaphil.or.jp