トッパンホール15周年 室内楽フェスティバル

室内楽と歌曲による濃密な6日間

 開館15周年を迎えたトッパンホールがこの5月に室内楽フェスティバルを開催する。中心となるのはヴァイオリンのクリスティアン・テツラフ。ターニャ・テツラフのチェロ、ラルス・フォークトのピアノ、レイチェル・ロバーツのヴィオラを加えたアンサンブルを核に、日下紗矢子、久保田巧のヴァイオリン、マーティン・ヘルムヘンのピアノ他、これまでに同ホールのステージを飾ってきた名手たちが、6公演(Ⅰ〜Ⅵ)にわたって顔を並べる。
 まず15日は、シューベルトの歌曲とピアノ三重奏曲第2番。ユリアン・プレガルディエン(名歌手クリストフの息子)のテノールによるリートと、私的にも親しい間柄だというフォークトとテツラフ兄妹の共演を聴ける。シューベルトにふさわしい親密な雰囲気が醸し出されることだろう。
 16日はブラームスのチェロ・ソナタ第2番、シェーンベルクの「浄められた夜」、シューマンのピアノ三重奏曲第1番といった濃厚なロマンティシズムを湛えた作品が並ぶ。一見、シェーンベルクが新しい作品のようにも見えるが、ブラームス作品とは13年の差しかないというのが興味深いところ。
 18日はブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」とシューマンの「詩人の恋」、ブラームスのピアノ四重奏曲第2番。プレガルディエンとフォークト、テツラフ兄妹らが共演する。詩情豊かな作品が集められた。
 19日はモーツァルトのピアノ四重奏曲ト短調、ベルク(H.ミュラー編)の六重奏曲(原曲はピアノ・ソナタop.1)、シューベルトのピアノ三重奏曲第1番。後半の3公演はマーティン・ヘルムヘンがピアノを務める。ベルクのピアノ・ソナタの弦楽六重奏版がおもしろい。この編曲で聴くと原曲以上にロマン性が際立ち、あたかももうひとつの「浄められた夜」のよう。
 21日はヤナーチェクのヴァイオリン・ソナタ、ベルク(H.ミュラー編)の「4つの歌曲 op.2」(弦楽四重奏版)、ブラームスのチェロ・ソナタ第1番、ドヴォルザークのピアノ五重奏曲。
 22日はシューベルトの「白鳥の歌」と弦楽五重奏曲。作曲者遺作が2作並べられた聴きごたえのあるプログラムで、プレガルディエンとヘルムヘン、日下、テツラフ兄妹らがシリーズの掉尾を飾る。
 多彩な編成による作品を名手の演奏で聴けるのはフェスティバルだからこそ。密度の濃い6公演になることはまちがいない。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年5月号から)

Ⅰ 5/15(日)15:00、Ⅱ 5/16(月)19:00、Ⅲ 5/18(水)19:00、Ⅳ 5/19(木)19:00
Ⅴ 5/21(土)15:00、Ⅵ 5/22(日)15:00
トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
※フェスティバルの詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://www.toppanhall.com