杉並公会堂開館10周年記念 ジャン=ギアン・ケラス 無伴奏チェロリサイタル バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲)

名匠がつむぐバッハ不朽のバイブル

©Marco Borggreve
©Marco Borggreve

今、「世界で最も目が離せないチェリストを挙げよ」と問われたならば、迷わずジャン=ギアン・ケラスの名を口にするだろう。この男のゆくところ、必ず旋風が巻き起こる。様式感をしっかり踏まえて古典作品を弾きこなし、現代作品には生命を吹き込む。またある時は弦楽四重奏の一員として鉄壁のアンサンブルを披露。世界の一流オーケストラをバックに協奏曲を弾き、古楽アンサンブルと共演してピュア・ガットの清冽な響きも聴かせる。しかも、すべてが卓越した技巧と音楽性に裏付けられている一方、彼自身の熱い息吹を反映させた“生きている音楽”なのだ。
そんな名匠が、「チェリストにとってのバイブル」と言われるJ.S.バッハの無伴奏組曲全6曲を、一夜で一気に披露するとあれば、期待するなと言う方が無理だろう。第1番からスタートし、2回の休憩を挟みつつ、第4、3、5、2番と進行して、締め括りの第6番へ。移ろいゆく豊かな色彩が、10周年の節目を迎えた杉並公会堂の空間を包んでいく。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年5月号から)

6/22(水)18:30 杉並公会堂
問:杉並公会堂03-5347-4450
http://www.suginamikoukaidou.com