深大寺での古楽演奏からジャズまで多彩な内容
4年目を迎え、開催期間を昨年の4日間から5日間に拡大し、ますます発展を続けている「調布音楽祭」。エグゼクティブ・プロデューサーを務め、自ら指揮、鍵盤楽器演奏、トークも手掛ける、鈴木優人に今年の「調布音楽祭」について聞いた。
調布市文化・コミュニティ振興財団と相互協力提携を結んでいるバッハ・コレギウム・ジャパンは、この音楽祭のホスト的存在で、最終日の最後に登場する。今年は、鈴木雅明指揮でヘンデルの「水上の音楽」。優人プロデューサーは「本当は多摩川に舟を浮かべて演奏したかったけれど」と笑う。
今年からの新たな企画は、「フェスティバル・オーケストラ」。音大生など、若手演奏家を中心に公募されるオーケストラはアカデミー的な性格を持つ。現在、弦楽器のみ約50名を募集中である。曲目は、鈴木雅明の指揮でチャイコフスキー「弦楽セレナーデ」とバッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲」、下野竜也の指揮でシェーンベルク「浄められた夜」。古楽器演奏のイメージの強い鈴木雅明のチャイコフスキーは興味津々だ。初年度は弦楽器だけ、来年以降は管楽器を入れて「3年くらいでフル・オーケストラにしたいです。調布ほか都内の音大とインターナショナルに活動する音楽家との両方に呼びかけ、オーディションでメンバーを選出します」とのことで、バッハはバロック楽器での参加も可能。バロック楽器とモダン楽器を混ぜてのアンサンブルとなる。若手を育成する活動としても重要だ。
今回の目玉といっていい企画が、モーツァルトが大成功を収めた1783年のウィーン・ブルク劇場での公演を歴史的に再現する「モーツァルト・ガラ・コンサート」だ。長年、優人プロデューサーが実現させたいと思っていたプログラムで、臼木あい、松井亜希を独唱者とし、小倉貴久子と森下唯がフォルテピアノを弾き、管弦楽はオリジナル楽器を用いるアンサンブル・ジェネシスが起用された。
「いつかオペラをやりたいという思いはあります。そういう劇場的なものとして、このモーツァルト・ガラ・コンサートを企画しました。通奏低音のチェンバロを弾きながら指揮することになると思います」
テノールの櫻田亮のリサイタルも優人プロデューサーが推すコンサートだ。
「櫻田亮さんは東京芸術大学准教授を務め、サントリーホールのオペラ・アカデミーでも後進の指導にあたっています。バッハ・コレギウム・ジャパンでのバッハも素晴らしいのですが、彼の本領はイタリア音楽です。今回が日本での初リサイタルになります。前半がバロックで、後半にロッシーニ、プッチーニを歌っていただきます」
ジャズ・ナイトをひらく山下洋輔は、優人プロデューサーの母校、麻布学園の先輩にあたる。
「山下さんにはバッハをキーワードにして、好きなように演奏していただきたい」
これも話題を呼ぶコンサートになるのは必至。
2年目となる深大寺での演奏会は、チェンバロの鈴木雅明とヴァイオリンの若松夏美のデュオ。本堂の床に初めてチェンバロを置くことになるという。そのほか、桐朋学園大学の学生が参加するミュージックカフェやオープンステージなどの無料コンサートのレベルが高いのも調布音楽祭の特長である。
取材・文:山田治生
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年5月号から)
調布音楽祭2016
6/22(水)〜6/26(日)
調布市グリーンホール、調布市文化会館たづくり、深大寺 他
問:調布市グリーンホール チケットサービス042-481-7222
調布市文化会館たづくり インフォメーション042-441-6177
音楽祭の詳細については下記ウェブサイトでご確認ください。
http://chofumusicfestival.com/cmf2016