共鳴しあうベートーヴェンと現代
30年以上にわたって在籍した名門リヨン国立歌劇場管弦楽団を自ら辞し、ソロ活動と作曲に専念するチェロの津留崎直紀。その盟友であり、やはり作曲の最前線に身を置きながら、ピアノの名手としても知られる野平一郎。自作の初演を含めて、室内楽のステージで名演を重ねてきた2人は、5年前にチェロ・ソナタ全5曲に取り組んで快演を聴かせるなど、ベートーヴェンの作品へ格別の思い入れを示している。
今回のステージでは、そんな2人の名手が、「ベートーヴェン」という“窓”から、21世紀を展望。まずは、「《魔笛》の主題による7つの変奏曲」とチェロ・ソナタ第5番、同第4番と楽聖の佳品を大枠に。ここへ津留崎の自作「独奏チェロの為のリチェルカーレ」や、フランスのブルノ・マントヴァーニによる「クレーの為の5つの小品」、西村朗の「リチュアル」と、現代の多彩な響きを挟み込む。時空の跳躍を何度も経験するうち、2つの時代と空間が不思議な共鳴を起こす瞬間を、聴衆は目の当たりにすることとなる。
文:笹田和人
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年5月号から)
5/21(土)14:00 東京文化会館(小)
問:プロアルテムジケ03-3943-6677
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