新世代のマエストロが引き出す劇的な鎮魂の響き
今年創立60周年を迎える日本フィルは、この9月に現首席客演指揮者であるピエタリ・インキネンを新たに首席指揮者に迎える。すでにたびたびの共演によって成果を残してきたインキネンと日本フィルのコンビが、一段と密接な関係を築いて、さらなる躍進への第一歩を踏み出すことになる。
そのインキネンと日本フィルが、4月の横浜定期演奏会でとりあげるのは、ヴェルディの「レクイエム」。これまでにインキネンが取り組んできたワーグナーやマーラー、シベリウスといったレパートリーを考えると、ヴェルディはやや意外な選択ともいえるだろうか。
ヴェルディの「レクイエム」といえば、死者のためのミサ曲でありながら、あたかもイタリア・オペラ的なドラマティックな興奮を呼び起こす曲として、かねてより多くのオペラ指揮者たちがすぐれた演奏を残してきた。パレルモの《ニーベルングの指環》で成功を収めるなど、ワーグナー指揮者でもあるインキネンは、この大作にどのようなヴィジョンを与えてくれるのだろうか。
声楽陣には大隅智佳子(ソプラノ)、池田香織(メゾソプラノ)、錦織健(テノール)、妻屋秀和(バス)、といった実力者たちがそろう。晋友会合唱団とともに万全の布陣。スペクタクルから真摯な祈りの感情まで、多様な要素が一曲にぎっしりとつまった傑作に、また新たな名演がひとつ誕生することを期待したい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年4月号から)
第316回 横浜定期演奏会 4/16(土)18:00 横浜みなとみらいホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
http://www.japanphil.or.jp