2016年時空の旅
ノット&東響のコンビが、ますます刺激的だ。2014年東響の音楽監督に就任したノットは、意欲的な取り組みを続け、前任者スダーンに培われた精緻な構築に立体感を加えている。特に注目すべきは、清新なプログラミング。中でも、前半にリゲティ(100台のメトロノームの作品)→バッハ→R.シュトラウスを続け、後半にショスタコーヴィチを置いた昨年11月定期は、聴く者に類のないライヴ感覚をもたらした。
4月の東京オペラシティシリーズも然り。前半は、リゲティの「アトモスフェール」「ロンターノ」「サンフランシスコ・ポリフォニー」と、パーセルの「4声のファンタジア」の各曲が交互に間断なく登場し、20世紀のミクロポリフォニーと17世紀イギリス・バロックの典雅なポリフォニーの間をトリップさせる。共演は神戸愉樹美ヴィオラ・ダ・ガンバ合奏団。後半は、R.シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」。「アトモスフェール」と同曲が揃えば、映画「2001年宇宙の旅」の世界。これは21世紀の“コスモ・プログラム”なのだ。
ノットの十八番であるリゲティの代表作3曲は、ベルリン・フィルとのCD(奇しくも01年録音)で、まさに宇宙的な美演を聴かせているから期待大。ちなみにノットは昨秋の記者会見で「パーセルを聴いた後にはリゲティの音楽のラインが聴き取りやすくなる」とも語っていた。そして「ツァラトゥストラ」は、彼いわく「様々な音楽のラインが交わることなく現代的な世界を形成する」作品。むろん前記の“精緻にして立体的な構築”が全開となる。ここは、ライヴでしか体感し得ない時空の旅を満喫しよう!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年3月号から)
第91回 東京オペラシティシリーズ
4/16(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp