ダンスの革新性の源流を辿るプログラム
京都から世界の最先端の舞台を発信する「KYOTO EXPERIMENT」。通常秋に開催のところ6度目の今年は「ロームシアター京都」のリニューアルオープンに合わせ年明けの春に開催、2016年は春秋2度の開催となる。今回は特にダンスやパフォーマンス作品が多くラインナップされ、要注目だ。
伝説の振付家
最初に挙げたいのは1960年代アメリカのポストモダンダンスの旗手の一人、トリシャ・ブラウンだ。フォーサイスをして最も尊敬すると言わしめる伝説の振付家で、ビルの壁を垂直に歩く『ウォーキング・オン・ザ・ウォールズ』やマンハッタンの屋上にダンサーを配置し動きを伝える『ルーフ・ピース』で知られる。そこで試された即興性や動きへの批評的視点は、今日のコンテンポラリーダンスの原点といえる。これまで来日はごく限られていたが、トリシャ・ブラウン・ダンスカンパニーの世界ツアーの一環として京都公演が実現、初期作品のオムニバス『Trisha Brown: In Plain Site』(3/19〜21)を京都国立近代美術館で上演する。当時の実験的な思考に触れる絶好の機会だ。
次代を担う先鋭な表現
ダンスの革新性を現在に引き継ぐのはフランスのボリス・シャルマッツ/ミュゼ・ドゥ・ラ・ダンス、96年バニョレ国際振付賞を受賞以来ヨーロッパの“コンセプチュアルな”ダンスをリードする存在だ。同じくフランスの若い世代ダヴィデ・ヴォンパクも今後のダンス界を担うと目され世界のフェスティバルに呼ばれている。彼らの作品は通常の意味での振付とは異なる。シャルマッツ『喰う』(3/26、27)は食べるという動作に、ヴォンパク『渇望』(3/5〜7)はカニバリズムに焦点を当て、人間の根源的な行為や欲望を深く抉り出し考察する。今日の先鋭な表現に出会うのも国際フェスティバルならではの体験だ。
ポストモダンダンスと同時代、日本では舞踏とアングラ演劇が生まれた。この流れを汲む大御所が二名。スペクタクル性に富んだ舞台で日本の誇る舞踏を第一線で担ってきた麿赤兒/大駱駝艦は、国内外で上演を重ねる『ムシノホシ』(3/16、17)で13年ぶりに京都に登場。ダンスの要素も色濃い維新派の松本雄吉は今回、林慎一郎の戯曲で衛星都市の神話『PORTAL』(3/12、13)を演出する。続く世代では殴り合いのような即興パフォーマンスで美術界からも注目される contact Gonzo(コンタクトゴンゾ)。作曲家の足立智美と組み、子供らを交えて新作『てすらんばしり』(3/26、27)を作る。シンガポール出身のチョイ・カファイは再登場、アジアのダンスをリサーチする『ソフトマシーン』の続編(3/11〜13)に取り組む。ダンスの多様な現在形を目撃されたい。
文:竹田真理
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年1月号から)
2016.3/5(土)〜3/27(日)
ロームシアター京都、京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座、京都府立府民ホール“アルティ”、京都国立近代美術館 他
問:KYOTO EXPERIMENT事務局075-213-5839
※公演の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
http://kyoto-ex.jp