深い知性に支えられた熟成の歌唱
深く透明な声にいったん沈潜させた言葉を、そっと丁寧に掬い取れば美しい歌になる。テキストの意味を、過度に表現する必要はない。クリストフ・プレガルディエンの歌曲を聴く時、いつもそう思う。19回目を迎える、トッパンホールの好評シリーズ『歌曲(リート)の森』に、最多となる3年連続6回目の登場だ。現代を代表する至高のテノールが、こんなに頻繁に日本を訪れてくれていることに感謝。歌うのはシューベルト「水車屋の美しい娘」。最近は息子ユリアンも美声のテノールとして頭角を示しているが、日本流に言えば1月で還暦を迎えた父クリストフに、老いの気配はまだまだ感じられない。今回も青春の甘さと苦さを、若々しくストレートに伝えてくれるに違いない。ピアノは、これまたすっかりおなじみのミヒャエル・ゲース。フォルテピアノのアンドレアス・シュタイアーと並んで、プレガルディエンが最も長く共演し信頼している名手。稀有な感興と出会う一夜。
文:宮本 明
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年3月号から)
3/24(木)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
http://www.toppanhall.com