ダニエル・ハーディング(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団 ブリテン「戦争レクイエム」

強力なキャストで挑む記念碑的な大作


 すみだトリフォニーを本拠とする新日本フィルが、2016年の年明け早々にダニエル・ハーディングの指揮でブリテン「戦争レクイエム」を鳴り響かせる。この曲はドイツの空爆によって破壊されたイギリスの教会の再建を祝って作曲されたが、このあたりの事情は私たちにとっても決して他人事ではない。今から約70年前、大空襲が東京を襲い、墨田の一帯も焼野原となった。現在からは想像もつかないが、この地で多くの人々が亡くなったのは事実なのだ。
 「戦争レクイエム」は通常のミサ典礼文に、詩人ウィルフレッド・オーウェンの作品を接合して作られた全6楽章、80分以上を要する大作である。通常の管弦楽とは独立する形で室内管弦楽団が設置され、さらに独唱、合唱、児童合唱が加わる。オペラも得意としたブリテンの描写力は歌詞の内容を的確、かつドラマティックになぞっており、苛烈な戦いや不安、慰めなど戦争の悲哀が余すところなく汲み上げられている。
 この記念碑的な上演に結集するキャストも強力だ。誰もが知る名テナー、イアン・ボストリッジは、これまでにもブリテン作品を精力的に世に紹介している。バリトンを歌うノルウェー出身のアウドゥン・イヴェルセンはチューリッヒ・オペラでのデビューを控えるなど、知名度を上げている実力派だ。ソプラノのアルビナ・シャギムラトヴァは先日の英国ロイヤル・オペラ来日時に《ドン・ジョヴァンニ》で印象的なドンナ・アンナを聴かせた。合唱はおなじみの栗友会、それに東京少年少女合唱隊が参加。巨大な演奏陣をコントロールするハーディングの棒さばきにも注目したい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年12月号から)

#551定期演奏会 2016.1/15(金)19:15、1/16(土)14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815
http://www.njp.or.jp