マルク・ゴレンシュテイン(指揮) 東京交響楽団

現代に相応しい鮮烈なチャイコフスキー像


 ときにはロシア音楽にどっぷりと浸りたくなる。西欧の音楽とは一味違う迫真の感情表現と濃密な詩情。そんなロシア音楽の真髄を伝えてくれそうなのが、12月に東京交響楽団を指揮するマルク・ゴレンシュテインだ。ムソルグスキー(リムスキー=コルサコフ編)の交響詩「禿山の一夜」、ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」、チャイコフスキーの交響曲第5番という、ずらりと人気曲を並べたオール・ロシア・プログラムが披露される。
 マルク・ゴレンシュテインといえば、2002年から11年まで、スヴェトラーノフの後任としてロシア国立交響楽団の芸術監督兼首席指揮者を務めた実力者。11年にはそのロシア国立交響楽団とともに来日して好評を博している。ロシアの伝統に立脚しながらも、現代にふさわしい鮮烈なチャイコフスキー像を打ち建ててくれるのではないだろうか。
 ラフマニノフで独奏を務めるピアニスト、セルゲイ・カスプロフも気になる存在だ。モスクワ音楽院でアレクセイ・リュビモフに師事し、さらにパリのスコラ・カントルム音楽院でも学んだ気鋭で、鬼才アファナシエフをして「腹の底からモスクワ音楽院仕込み」「これほどの才能をもったピアニストをほかに知らない」とまで言わしめた人物である。一癖も二癖もあるアファナシエフが絶賛するとは、どういうピアニストなのだろう。大きな驚きが待っているかもしれない。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年12月号から)

第53回 川崎定期演奏会
12/12(土)17:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
第636回 定期演奏会
12/13(日)14:00 サントリーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
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