スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ(指揮) 読売日本交響楽団 特別演奏会『究極のブルックナー』

ブルックナーと対峙するマエストロの現在

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ ©読売日本交響楽団
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ ©読売日本交響楽団

 スクロヴァチェフスキは1923年10月3日生まれだから、92歳。ブルックナー指揮者として名をはせた長老は多いが、いよいよヴァントを超えて朝比奈隆に近づいてきた。しかも凄いのは、毎年のように来日し若々しい音楽を披露している点だ。足取りもしっかりしているし、まだまだ元気な音楽を聴けそうなのは何よりである。
 さて、次回の来日は来年1月で、ブルックナーの交響曲第8番を振る2公演が予定されている。『究極のブルックナー』と銘打たれているが、このところの演奏から推測するに“究極”に肉薄するのは間違いないだろう。
 昨年、一昨年の来日でも第4番「ロマンティック」や第0番などを取り上げているが、毎回バランスが注意深く整えられ、腹にずしりと響きながら、透明感のあるテクスチュアで聴かせてくれた(これにはもちろん読響のアンサンブル力も大きく寄与している)。それにテンポが合理的かつ快活でダレない。「ロマンティック」のスケルツォなどは“爆速”といってもいいくらいの疾走ぶりで度肝を抜かれた。時折、テンポを大きく揺らし歌舞伎役者のような“ニラミ”をきかせるのにもハッとさせられる。あの手この手の“スクロヴァ節”が繰り出され、ファンは痺れることの連続だったのではないだろうか。
 スクロヴァチェフスキは、ブルックナーの中でも最大級の規模を持つ第8番を、今年7月にリンツ・ブルックナー管との公演で成功させている。宇宙的規模を持つ曲だからこそ、読響との共演でも“究極”の魅力満載の演奏が期待できそうだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年11月号から)

2016.1/21(木)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール
2016.1/23(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール(完売)
問:読響チケットセンター0570-00-4390
http://yomikyo.or.jp