ピアノ・エトワール・シリーズ アンコール! Vol.4 フランチェスコ・トリスターノ

自作を交えて捧げるバッハへのオマージュ

©Aymeric Giraudel
©Aymeric Giraudel

 音楽界に新風を吹き込み、クラシックだけでなく多様なジャンルの音楽ファンから注目を集めるフランチェスコ・トリスターノ。今年の彩の国さいたま芸術劇場公演では、バッハと自作を組み合わせたクリエイティビティあふれるプログラムに挑む。子供の頃、ピアノの先生に「僕が弾きたいのはバッハと自分の作品だけ」と主張していたというから、今回はまさに彼の希望を現実にした形だ。
 その内容は、「KYEOTP」、「主題と変奏」(新作・世界初演)、「シャコンヌ」という3つの自作曲の間に、バッハのパルティータ第1番&第6番、そして第2番をはさむというもの。自作はいずれもバッハとの関連性が意識されていて、中でも彼が“最も完璧な音楽の形”だと考える主題と変奏のスタイルで作曲された新作は、長らくしまい込んでいた構想をこの夏に形にした、出来立ての1曲だ。この流れの中にあれば、聴き慣れたバッハもまた違った新鮮さを見せることだろう。作品の知られざる魅力を次々と我々の目の前に示す彼の、次なる試みを聴こう。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年11月号から)

11/29(日)15:00 彩の国さいたま芸術劇場 音楽ホール
問:彩の国さいたま芸術劇場0570-064-939
http://www.saf.or.jp/arthall