上海クァルテット オール・ベートーヴェン・プログラム

作風の変遷から見えてくる新しい発見


 東洋と西洋。そして、過去と未来。その十字路に立つのが、上海クァルテットだ。傑出したアンサンブル能力と音楽性を武器に、彼らのルーツである中国の民謡や現代音楽の要素を採り込みつつ、ヨーロッパ音楽へ東洋の音楽の繊細さを融合させ、室内楽シーンの最先端を走り続けて、結成から32年目を迎えた彼ら。晩秋の来日公演では、ベートーヴェンの偉大な弦楽四重奏曲全16曲のうち、初期の第3番、中期の第11番「セリオーソ」、後期の第15番と、そのエッセンスを抽出したような3曲を披露する。
 ウェイガン(ヴァイオリン)とホンガン(ヴィオラ)のリ兄弟を中心に、上海音楽院で結成。1985年、ポーツマス(現・ロンドン)国際弦楽四重奏コンクールで2位入賞を果たし、メニューインに絶賛された。その勧めで渡米し、87年にはシカゴ新人コンペティションで優勝。ジュリアードなど名四重奏団の薫陶を受け、世界的トップ・アンサンブルへと急成長した。その後は古典から新作初演まで幅広く手掛け、巨匠音楽家とも共演を重ねている。
 ベートーヴェンを「特別な作曲家」と位置付ける彼ら。今回披露する3曲について「それぞれの時期に特有の作曲法や個性の違いを反映させている。曲ごとに、新しい発見をしていただければ」と、メンバーのイーウェン・ジャン(ヴァイオリン)。「世界は悲しく、混沌とした状況に直面している。そんな危機の中でも、音楽には人々の心をひとつにし、深い痛みを癒す力があると信じる。私たちは音楽家として、それを担う使命がある」と語る。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年11月号から)

11/17(火)19:00 東京文化会館(小)
11/18(水)19:00 あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール
問:テレビマンユニオン03-6418-8617
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