レオン・フライシャー(指揮/ピアノ) 日本センチュリー交響楽団

苦難を乗り越えた名匠とオーケストラとの共演

レオン・フライシャー ©Koichi Miura
レオン・フライシャー ©Koichi Miura

 ベートーヴェン直系の演奏家の系譜に名を連ね、「天才」と称されながら、右手の故障により、37歳で引退を余儀なくされたアメリカ出身のピアニスト、レオン・フライシャー。以降は指揮者として活躍を続けてきたが、近年、両手での演奏活動を再開した。そんなフライシャーが日本センチュリー交響楽団と初めて共演し、弾き振りを含めた3曲を披露。苦悩の中から音楽の歓びを見出だした巨匠と、覇気あふれるオーケストラとの出逢いが、熱い名演を紡ぎ出す。
 ピアニストとして高い技術はもちろん、骨太な音楽創りが高い人気を集め、特にベートーヴェン演奏で支持を得たフライシャー。65年に神経性の疾患で右手指が不自由になって以降は、指揮の道へ。裏の裏まで踏み込むようなスコア解釈を武器に、世界中の第一線オーケストラと共演を重ねた。そして、今回が初共演となる日本センチュリー響もまた、自治体からの補助金カットなどの苦難を乗り越え、音楽の情熱と共に、再び羽ばたきつつある精鋭集団だ。
 ステージは、ベートーヴェンの序曲「コリオラン」で幕開け。続いて、モーツァルトのピアノ協奏曲第12番を、注目の弾き振りで。そして、再びタクトをとり、シューベルトの交響曲第8番「グレイト」を披露。「『最高の自由は、訓練から生まれる』とのフライシャーの言葉は、未来が見えず、もがいていた若者を奮い立たせた。“悲運の天才”から紡がれる音の全てを、心に刻みたい」とセンチュリー響の首席クラリネット奏者、持丸秀一郎は期待を露わにしている。
文:笹田和人
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年11月号から)

第205回 定期演奏会
11/13(金)19:00、11/14(土)15:00 ザ・シンフォニーホール
問:センチュリー・チケットサービス06-6868-0591
http://www.century-orchestra.jp