ヴェネツィアからロンドンへ向かう“音楽の旅”
鍵盤楽器の名手であり、指揮や楽譜校訂や復元の分野でも八面六臂の活動を続ける鈴木優人。そして、日本音楽コンクール初のカウンターテナーでの優勝者となり、日本人カウンターテナーとして初めてウィーン国立歌劇場と客演契約を結ぶなど、国際的な舞台へと羽ばたく藤木大地。王子ホールのシリーズ『バロック・ライヴ劇場』の第4弾「シンプロン・オリエント急行」は、そんな2人の俊英が誘う、ヴェネツィアからロンドンへ向かう“音楽の旅”だ。
東京芸大の同窓であり、藤木がテノールからカウンターテナーへ転向する際、鈴木へ相談してから一気に距離を縮め、何度も共演を重ねた2人。今回は、鈴木がヴァイオリンの山口幸恵らと結成した、バロックから現代までの作品へ自在に取り組む「アンサンブル・ジェネシス」も出演。モンテヴェルディ「アリアンナの嘆き」やパーセル「夕べの賛美歌」などの歌曲や、ヴィヴァルディやヘンデルのオペラからの名アリアに、フレスコバルディ「トッカータ ト長調」など器楽曲を交えて、彩り豊かに聴かせる。
「アリアでは狂おしく陶酔してもらって、一息つく形で器楽曲が入って来る構成です」と鈴木が言えば、「曲名だけだと、知らない曲ばかりかもしれませんが、実際に聴いていただくと『ハレルヤ!』な気分になれるプログラム」と藤木。特に、ステージ後半で特集するヘンデルのアリアについて、「(解釈に)“自由な場所”が必ずある。本番になると、自分の中に渦巻く感情を詩に乗せてぶちまけられるように書かれていて、どんなに即興をのせても大丈夫」と語っている。
文:笹田和人
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年11月号から)
11/12(木)19:00 王子ホール
問:王子ホールチケットセンター03-3567-9990
http://www.ojihall.jp