1996年、宮崎県立芸術劇場(1993年オープン=現メディキット県民文化センター)のキラーコンテンツとして、ヴァイオリンの巨匠アイザック・スターン(1920-2001)をメインゲストに招き「宮崎国際室内楽音楽祭」と題して始まった「宮崎国際音楽祭」(2002年に改称)。第31回を迎える2026年は「音、舞い、その先へ」と銘打ち、多彩な展開をみせる。

第30回の節目に当たった昨年は音楽監督が14年ぶりに交代、徳永二男から三浦文彰(1993-)へと一気に47歳の若返りを図った。世界的な指揮者で、東京フィルハーモニー交響楽団の名誉音楽監督チョン・ミョンフンを宮崎国際音楽祭管弦楽団の指揮台に招き、ベートーヴェンやブラームスの圧倒的名演奏で魅了した一方で、名ピアニストでもあるマエストロをピアノ三重奏&五重奏の公演に起用するなど、室内楽への視点を忘れたわけではなかった。
今年はオーケストラ公演においても「室内楽の発想」が随所に感じられる。

5月5日の演奏会〔1〕は「鍵盤の詩人アンデルシェフスキ、究極の室内楽」(演劇ホール)。1969年ワルシャワ生まれのピョートル・アンデルシェフスキを迎え、前半は深く傾倒するブラームス晩年のピアノ曲作品116〜119の中から6曲を独奏。後半には三浦の強い希望と人選でベートーヴェン「弦楽三重奏曲第3番ニ長調」、ショスタコーヴィチの「ピアノ五重奏曲ト短調」を台湾出身のポール・ホアン(ヴァイオリン)、フランスのアドリアン・ラ・マルカ(ヴィオラ)、韓国のユンソン(チェロ)と国際色豊かな顔ぶれによる室内楽の2曲を組み合わせた。
10日の演奏会〔2〕は「オーケストラで描く『深き陰影と若き息吹』」(アイザックスターンホール)。ヴィオラの名手から指揮に転じ、2024年ニコライ・マルコ国際指揮者コンクールで優勝した韓国のサミュエル・スンウォン・リーが登場する。ただしアンデルシェフスキはソロとリードを兼ねた「弾き振り」で、ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第1番ハ長調」を演奏。リーはライプツィヒのメンデルスゾーン音大で教鞭をとった背景にちなみ、序曲「フィンガルの洞窟」と交響曲第4番「イタリア」を指揮する。

14日の演奏会〔3〕は「バレエ×室内楽『美の響宴』」(都城市総合文化ホール)。世界的なトップダンサーからのオファーが相次ぐパトリック・ド・バナが振付した作品をイタリアの名ダンサー、エレオノーラ・アバニャートやジャコモ・カステッラーナらで贈るバレエ・ガラ。三浦やユンソン、ピアノの田村響が演奏に加わる。
16日の演奏会〔4〕は「ジュピター&ヤマト『天空のシンフォニー』」(アイザックスターンホール)。下野竜也指揮でモーツァルト交響曲第41番「ジュピター」と羽田健太郎の交響曲「宇宙戦艦ヤマト」。後者ではピアノの髙木竜馬、ソプラノの隠岐彩夏のソロも聴ける。
17日の演奏会〔5〕(フィナーレ)は「バレエ×オーケストラ『華麗なる新たな挑戦』」(演劇ホール、完売)。前半はアイゲリム・ベケタエワおよびバクティヤール・アダムザン2人による「グラン・パ・ド・ドゥ」、後半はパトリック・ド・バナが振付したメンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」(三浦の弾き振り)を世界初演する。その他の指揮は井田勝大。オーケストラ公演はすべて、宮崎国際音楽祭管弦楽団が担う。
文:池田卓夫
第31回 宮崎国際音楽祭
2026.4/26(日)~5/17(日) メディキット県民文化センター 他
問:宮崎国際音楽祭事務局0985-28-3208
https://www.mmfes.jp
※各公演、チケット発売状況の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。

池田卓夫 Takuo Ikeda(音楽ジャーナリスト@いけたく本舗®︎)
1988年、日本経済新聞社フランクフルト支局長として、ベルリンの壁崩壊からドイツ統一までを現地より報道。1993年以降は文化部にて音楽担当の編集委員を長く務める。2018年に退職後、フリーランスの音楽ジャーナリストとして活動を開始。『音楽の友』『モーストリー・クラシック』等に記事や批評を執筆する他、演奏会プログラムやCD解説も手掛ける。コンサートやCDのプロデュース、司会・通訳、東京音楽コンクール、大阪国際音楽コンクールなどの審査員も務める。著書に『天国からの演奏家たち』(青林堂)がある。
https://www.iketakuhonpo.com

