
読売日本交響楽団が4月定期で取り上げるのは、エドワード・エルガーの「ゲロンティアスの夢」。枢機卿ニューマンの詩に基づき、死を迎えた魂が浄化を経て神のもとへ向かう過程を、合唱と管弦楽、三人の独唱で描いた壮大なオラトリオだ。ワーグナー以後の半音階的語法を吸収して、宗教的な瞑想をドラマティックに表現する。1900年に初演され、エルガーの名声を決定づけた重要作でもある。
指揮を務めるのは英国出身のアイヴァー・ボルトン。古楽演奏の分野で研鑽を積み、バロックから古典派に至るレパートリーで高い評価を確立、バロック・オペラの復興にも貢献してきた。数多のオーケストラを率い、現在もドレスデン祝祭管弦楽団の首席指揮者、ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団桂冠指揮者の任にある。イギリスにはヘンデル以来のオラトリオの伝統、それを支える合唱文化があるが、その流れを血肉化するベテランだ。様式感に裏打ちされた透明な音楽づくりと、声楽作品における勘所を押さえたリードが、後期ロマン派的色彩を帯びたエルガーのオラトリオでどう活かされるのかが聴きどころとなろう。
ゲロンティアスを歌うのはトーマス・アトキンス(テノール)、天使役にベス・テイラー(メゾソプラノ)、司祭および苦悩の天使にクリストファー・モルトマン(バリトン)という布陣。いずれも英国声楽界で活躍する実力派で、英語をテクストにした作品にこれ以上の適材はいない。さらに新国立劇場合唱団が、このオラトリオに一層の熱量を加えてくれるはずだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2026年4月号より)
アイヴァー・ボルトン(指揮) 読売日本交響楽団 第657回 定期演奏会
2026.4/28(火)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
https://yomikyo.or.jp

