次世代のダンサーと身体でつなぎ、伝える
少し意外な気がした。
世田谷パブリックシアターの『SePT独舞』シリーズは、期待の新人の登竜門的なイメージがあったからだ。しかし今回登場するのは30年以上トップランナーであり続けている黒沢美香なのである。今回は3本立てだが、これがなかなか意義深い組み合わせになっているのだ。
というのも3作品のうち、ふたつは「1985年に初演された作品」なのである。まさにコンテンポラリー・ダンスの黎明期だ。なんと黒沢のソロデビュー作『Wave』が本人によって甦る。また『6:30AM』は「ラジオ体操第二」をモティーフにした作品で、オーディションで選んだ5人のダンサーが出演する。
コンテンポラリー・ダンスも今や次の世代に「踊り継ぐ」時期に来ているが、『SePT独舞』も、そういう時代に沿った使命を果たそうとしているようだ。いずれも30年という時を超えた作品が、現代のダンサーと観客にどう伝わっていくのかが見所である。
そして3本目にはバルトークの曲による黒沢自身のソロ『この島でうまれたひと』。これは新作で、他の2本との比較も面白いだろう。
離れた時空をダンサーの身体でつなぎ、伝えていく公演になりそうだ。
文:乗越たかお
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年8月号から)
8/28(金)〜8/30 (日) シアタートラム
問:ダンスインディード090-4429-5747