INTERVIEW 寺神戸亮(指揮/ヴァイオリン)

北とぴあ国際音楽祭2025
初演から300年 ヘンデル作曲の名作オペラ《ロデリンダ》の魅力を語る 

 古楽ファンの注目の的「北とぴあ国際音楽祭」が、ヘンデルの歌劇《ロデリンダ》を上演。死んだと思った夫の国王ベルタリードが生きていると知り、貞女の鏡ロデリンダはうれし涙に暮れるが、王位簒奪者グリモアルドが二人を引き裂く。王妃の運命はいかに!指揮&ヴァイオリンの寺神戸亮が抱負を語る!

寺神戸 亮 ©️C. Villarroel

「以前、ある団体からヘンデルをやらないかというお誘いがあり、調べた中で最も気になったひとつが《ロデリンダ》でした。決定的な名曲は無いものの、アリア全体のレヴェルが非常に高いと思ったのです。どの曲も本当に魅力的で粒が揃っていると感じ、ずっと心に温めていました。今回は、お馴染みのイタリアの名ソプラノ、ロベルタ・マメリさんがタイトルロールを演ってくれるとなり、そこから一気に企画が動きました」

 一方、物語で特に興味深いのが、カウンターテナー同士(初演当時はカストラート)の緊迫場面。国王が牢に居るところ、陰で支える忠臣ウヌルフォが来たのに敵だと思い込んで刺してしまうが、血まみれのウヌルフォはそれでも王の誤解をとき、秘密の抜け道を示すというシーンである。

「ベルタリード役のクリント・ファン・デア・リンデさんとウヌルフォ役の中嶋俊晴さんの声の色が違うんです。中嶋さんはバリトンが裏返った深い声。クリントさんはもう少し軽めです。朗唱の対話も迫力ありますし、お二人ともコロラトゥーラが達者なのでアリアも聴き応えありますよ」

左より:ロベルタ・マメリ/クリント・ファン・デア・リンデ ©️Olivier Charlet/ニコラス・スコット

 このほか、ロデリンダの義妹で最初は非協力的なエドゥイジェをメゾソプラノの輿石まりあ、敵役グリモアルドをテノールのニコラス・スコット、狡猾なガリバルドをバリトンの大山大輔が演じる。

「脇を固める人々の存在感も強いですよ。輿石さんはいまオランダ在住の期待の新人、スコットさんはマメリさんが紹介してくれた方で今回の初共演が楽しみです。大山さんもこの音楽祭に何度も出ておられます・・・なお、《ロデリンダ》では、管楽器が本当に稀にしか出てこないんです。ヘンデルは本作で『何か特別な色を出したい』時だけ管を使うので、全体の響きは分厚くならず、トリオ・ソナタ的な展開になるんです。だから、透明度の高い構成のもと、歌声がより聴きやすくなりますが、そのなかで管が出てくるとやはり耳を奪われます。とても面白い使い方で、バスーンがオブリガートを鳴らしたり、フルート1本とリコーダー2本が重なったりします。レ・ボレアードの皆さんと共に良いステージを作り上げます。公演をぜひぜひお楽しみに!」

文:岸 純信(オペラ研究家)

北とぴあ国際音楽祭2025
ヘンデル作曲 オペラ《ロデリンダ》(セミ・ステージ形式/イタリア語上演・日本語字幕付)

2025.11/28(金)17:00
2025.11/30(日)14:00
北とぴあ さくらホール


出演
指揮・ヴァイオリン:寺神戸 亮
演出:小野寺修二(カンパニーデラシネラ)

ロデリンダ:ロベルタ・マメリ(ソプラノ)
ベルタリード:クリント・ファン・デア・リンデ(カウンターテナー)
グリモアルド:ニコラス・スコット(テノール)
エドゥイジェ:輿石まりあ(メゾソプラノ)
ウヌルフォ:中嶋俊晴(カウンターテナー)
ガリバルド:大山大輔(バリトン)

ダンサー:崎山莉奈、大西彩瑛

管弦楽:レ・ボレアード(ピリオド楽器使用)

●料金
【一般】
11/28 SS席9,000円 S席7,000円 A席5,000円
11/30 SS席9,500円 S席7,500円 A席5,500円

【メンバーズ割引】
11/28 SS席8,000円 S席6,000円 A席4,000円
11/30 SS席8,500円 S席6,500円 A席4,500円

【北区民割引】
11/28 SS席8,000円 S席6,000円 A席4,000円
11/30 SS席8,500円 S席6,500円 A席4,500円

【25歳以下】
両日共通 SS席4,500円 S席3,500円 A席2,500円

問:北区文化振興財団03-5390-1221
https://sites.google.com/view/himf2025/
※音楽祭の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。


岸 純信 Suminobu Kishi

オペラ研究家。『ぶらあぼ』ほか音楽雑誌&公演プログラムに寄稿、CD&DVD解説多数。NHK Eテレ『らららクラシック』、NHK-FM『オペラファンタスティカ』に出演多し。著書『オペラは手ごわい』(春秋社)、『オペラのひみつ』(メイツ出版)、訳書『ワーグナーとロッシーニ』『作曲家ビュッセル回想録』『歌の女神と学者たち 上巻』(八千代出版)など。大阪大学非常勤講師(オペラ史)。新国立劇場オペラ専門委員など歴任。