
「横浜市招待国際ピアノ演奏会」は、40年以上の歴史のなかで28ヵ国199名の才能あふれる若手ピアニストを紹介してきた。これまでに小林愛実や務川慧悟、藤田真央なども名を連ねていることからもわかる通り、多くの出演者が世界的に目覚ましい活躍を見せている。第43回となる今年は、田所光之マルセル(日本/フランス、モントリオール国際音楽コンクール ファイナリスト)にヨナス・アウミラー(ドイツ、第12回浜松国際ピアノコンクール第2位)、サン・ジッタカーン(タイ、ジュネーヴ国際音楽コンクール第3位)、そしてジャン=ポール・ガスパリアン(フランス、ヨーロッパ・ピアノ・コンクール・ブレーメン優勝)の4名が集う。同演奏会の出演条件には「35歳以下であること」、「原則として、国際音楽コンクール世界連盟に加盟しているコンクールに2つ以上の入賞実績があること」と厳しいものが課されており、このことからも出演者の実力の高さが窺える。
会場はもちろん横浜みなとみらいホールで、今年は9年ぶりに大ホールで行われる。プログラムは、田所は自ら“挑戦”と位置付けるリストの「超絶技巧練習曲」からの抜粋、10月のショパンコンクールに出場するアウミラーはオール・ショパン、ジッタカーンはシューマン、ガスパリアンはドビュッシーにリストなど。いずれも各出演者が自らの音楽性をアピールする内容だ。
なお、7月11日には同演奏会のプレ・イベントがヤマハ銀座店で行われ、委員長の海老彰子をはじめ企画委員の伊藤恵、須田眞美子、弘中孝が登壇。それぞれの奏者の魅力とともに、演奏会について「4人の全く違う個性を持ったピアニストの演奏を聴けるのはとても貴重。アンコールには出演者同士の連弾もあるのでお祭り気分で楽しんでほしい」と話した。

文:長井進之介
写真提供:横浜みなとみらいホール
第43回横浜市招待国際ピアノ演奏会
2025.11/16(日)15:00 横浜みなとみらいホール
曲目
サン・ジッタカーン
シューマン:アラベスク ハ長調 op.18、交響的練習曲 op.13
ジャン=ポール・ガスパリアン
ドビュッシー:版画
ババジャニアン:6つの描写
リスト:ヴェルディのオペラ《トロヴァトーレ》のミゼレレによる演奏会用パラフレーズ S.433 R.266
ヨナス・アウミラー
ショパン:幻想曲 ヘ短調 op.49、3つのマズルカ op.56、スケルツォ第3番 嬰ハ短調 op.39
田所光之マルセル
リスト:超絶技巧練習曲 S.139 R.2b より
第3番〈風景〉S.139-3、第4番〈マゼッパ〉S.139-4、第7番〈エロイカ〉S.139-7、第8番〈荒野の狩〉S.139-8、第12番〈雪かき〉S.139-12
リスト:愛の夢 – 3つのノクターン第1番 変イ長調 S.541-1 R.211
問:横浜みなとみらいホールチケットセンター 045-682-2000
https://yokohama-minatomiraihall.jp

長井進之介 Shinnosuke Nagai
国立音楽大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学に交換留学。アンサンブルを中心にコンサートやレコーディングを行っており、2007年度〈柴田南雄音楽評論賞〉奨励賞受賞(史上最年少)を機に音楽ライターとして活動を開始。現在、群馬大学共同教育学部音楽教育講座非常勤講師、国立音楽大学大学院伴奏助手、インターネットラジオ「OTTAVA」プレゼンターも務める。
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