“変奏曲”の傑作を集めて
マーティン・ヘルムヘンは、ドイツロマン派音楽に通底する文学的な詩情を、まるで自らの言葉で語るように演奏できるピアニスト。2008年と11年にはトッパンホールの聴衆の前で、その血の通う瑞々しい音楽を鮮やかに披露した。この夏ヘルムヘンは「変奏曲」という切り口から、再びドイツおよびウィーンの音楽が放つ、人間的で温かく、繊細かつ情熱的な世界観を聴かせてくれる。幕開けのシューベルトの「ヒュッテンブレンナーの主題による13の変奏曲」では、現実世界からロマン的な世界へといざなってくれるだろう。ウェーベルンの無調の変奏曲で、聴き手の耳が敏感に開いたところで、20歳のシューマンが書いたチャーミングな「アベッグ変奏曲」を入れ込む。そして後半はベートーヴェンの最後のピアノ曲であり、変奏曲形式の集大成でもある大曲「ディアベリの主題による33の変奏曲」で締めくくるプログラム。めくるめく変奏曲の世界にたっぷりと浸りたい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年8月号から)
8/2(日)17:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
http://www.toppanhall.com