【Blu-ray】ピアノ・リサイタル at 日本武道館/角野隼斗

 日本武道館でのリサイタルを収録した映像。最初のショパンのスケルツォとワルツは音楽の表情が硬いが、リストのハンガリー狂詩曲からは持ち前のリズム感覚で本領発揮。なかでも、モーツァルトの「トルコ行進曲」による変奏曲や、ラヴェルの「ボレロ」といった編曲では、主題を展開させるのではなく、わずかな変形を繰り返して聴き手を引き込んでいく。2台のピアノにシンセサイザーなど八面六臂に楽器を弾き分けた自作の「追憶」では、ガーシュウィン、ラヴェル、ライヒ、バッハ、坂本龍一などからの引用も巧みにちりばめつつ、スマートかつ豊饒な音世界を作り出した。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2025年9月号より)

【information】
Blu-ray『ピアノ・リサイタル at 日本武道館/角野隼斗』

ショパン:スケルツォ第1番、ワルツ第14番、エチュード op.25-11「木枯らし」/モーツァルト(角野隼斗編):24の調によるトルコ行進曲変奏曲/リスト:ハンガリー狂詩曲第2番(カデンツァ:角野)/角野隼斗:Human Universe、追憶、3つのノクターン/ラヴェル(角野編):ボレロ 他

角野隼斗(ピアノ)

収録:2024年7月、日本武道館(ライブ)
ソニーミュージック
SIXC 114 ¥6600(税込)


鈴木淳史 Atsufumi Suzuki

雑文家/音楽批評。1970年山形県寒河江市生まれ。著書に『クラシック悪魔の辞典』『背徳のクラシック・ガイド』『愛と幻想のクラシック』『占いの力』(以上、洋泉社) 『「電車男」は誰なのか』(中央公論新社)『チラシで楽しむクラシック』(双葉社)『クラシックは斜めに聴け!』(青弓社)ほか。共著に『村上春樹の100曲』(立東舎)などがある。
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