古楽の地平を切り拓く柴田俊幸&アンソニー・ロマニウクが日本ツアーを開催!

左:アンソニー・ロマニウク 右:柴田俊幸 ©sightways

 即興演奏は、民族音楽やジャズなどの領域であって、楽譜に基づいて演奏をおこなうクラシック音楽に関係のないスキルなのだろうか? J.S.バッハをはじめとする多くの作曲家たちやSP時代の偉大な演奏家には即興の名手が多かったのだから、答えは否である。

 現代にこの感覚を蘇らせてくれるのが柴田俊幸とアンソニー・ロマニウクだ。彼らのライブは、直前のリハーサルまで曲順が決まらなかったり、曲そのものが変更になったりと、とにかく実際に演奏しながら最善の形を探っていく。そして演奏がはじまってから共演者同士で刺激を与え合ったり、聴衆の空気感を感じ取ったりすることで、その場で化学変化が生じ、聴衆の立場からすると今まさに音楽が生まれていくかのような感覚になれるのが、この二人のライブを聴く最大の魅力だ。J.S.バッハを基調に、高崎ではC.P.E.バッハ、グラス、坂本龍一も! 東京ではJ.S.バッハだけだが、二人による編曲作品も加わる。今回の公演の演目を含む新しいCDも必聴だが、彼らの本分は生演奏なのだから絶対に聴き逃がすな!

文:小室敬幸

(ぶらあぼ2025年8月号より)

柴田俊幸(フラウト・トラヴェルソ) & アンソニー・ロマニウク(チェンバロ 他)日本ツアー2025
2025.8/21(木)19:00 高崎芸術劇場 音楽ホール
8/26(火)19:00 サントリーホール ブルーローズ(小)
問:テレビマンユニオン03-6418-8617 
https://www.tvumd.com
※愛知、東京、兵庫、山口でデュオ/ロマニウク・ソロ公演あり。


小室敬幸 Takayuki Komuro

1986年、茨城県出身。東京音楽大学で作曲を学んだ後、同大学院では音楽学を専攻。修了後は大学の助手と非常勤講師を経て、現在は音楽ライター。クラシック音楽、現代音楽、ジャズ、映画音楽を中心に演奏会やCDの曲目解説、雑誌やWEBメディアにインタビュー記事を執筆。また、現在進行形のジャズを紹介するMOOK『Jazz The New Chapter』にも寄稿している。共著に『聴かずぎらいのための吹奏楽入門』『ピアノへの旅』。