沼尻竜典 歌劇《竹取物語》 日本初・舞台上演

日本発オペラに新たな名作が誕生


 沼尻竜典が、芸術監督を務めるびわ湖ホールで自作のオペラ《竹取物語》を振る。指揮と並行して桐朋学園で三善晃に作曲を学んだ沼尻は、指揮者として本格的なキャリアを歩み出す以前にすでに合唱曲の楽譜も出版していた。
 オペラ《竹取物語》の原作は、もちろんあの「かぐや姫」の物語。三善門下の兄弟子に当たる池辺晋一郎が館長を務める横浜みなとみらいホールの委嘱作品で、2014年1月に同ホールにおいて演奏会形式で初演された。当初から、横浜のパートナー都市であるベトナム・ハノイのオペラハウスでの舞台上演を想定したプロジェクトで、ハノイでの舞台形式初演も今年2月、本名徹次の指揮、日本・ベトナム合同キャストにより行なわれて成功を収めた。栗山昌良の演出で新たに制作される今回のプロダクションが、日本で初めての舞台上演ということになる。出演は、主役かぐや姫を横浜とハノイでも歌った幸田浩子が演じるほか、翁に清水良一、媼に永井和子、帝に与那城敬ら、今回からの新たなキャストも加わる。
 沼尻は「昭和の歌謡曲のスタイルを意識して作曲した」と述べている。「歌謡曲風」かどうかはともかく、はっきりとしたメロディと親しみやすいハーモニーに彩られた、大人から子供まで楽しめる音楽だ。全5景構成の台本は沼尻自身の書き下ろし。作曲の事情に合わせて手直しできるという利点があったからかもしれないが、テキストもとても聴き取りやすい。夏休みの週末、家族でオペラを楽しみに出かけるのも素敵だ。
文:宮本 明
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年7月号から)

8/8(土)14:00、8/9(日)14:00 びわ湖ホール(中)
問:びわ湖ホールチケットセンター077-523-7136
https://www.biwako-hall.or.jp