漆原朝子(ヴァイオリン)

歌心の豊かなプログラムを感じてほしい

©Naoya Yamaguchi, Studio Diva

©Naoya Yamaguchi, Studio Diva

 ヴァイオリニストの漆原朝子が7月に全国11ヵ所を巡るリサイタル・ツアーを行う。長く共演を重ね、高い評価を得ているベリー・スナイダーとのデュオ。1966年のヴァン・クライバーン・コンクールでラドゥ・ルプーに次ぐ銀賞を獲得した大ベテランのピアニストだ。
「初めてご一緒したのは96年。最初に合わせた時、ほんの数分で『すごい!』とわかりました。とても繊細な方で、調弦のAの音をすごく丁寧に、思い入れのある美しい音でくださって、その瞬間にすっと空気が変わります。それは今でも変わりません」
 ツアーの曲目のベースは、東京(7/12)と京都(7/20)で聴けるウィーンをテーマにしたプログラム。R.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタを中心に、《ばらの騎士》からの編曲、シューベルトのソナチネ第2番、ブラームスのソナタ第2番を弾く。
「シュトラウスはジュリアードで勉強していた頃によく弾いていましたが、もう20年以上前のこと。その頃はシュトラウスをまだよく知らずに弾いていたかもしれません。交響詩やオペラを聴いて経験を重ねた今のほうが、かなりシュトラウスが身近になった実感があります。彼のヴァイオリン曲は少ないですが、唯一のソナタは、ちょうど交響詩を書き始めるようになる転換期の作品です。幕が開くといきなりストーリーが始まるような導入部や、たいへん華やかな第3楽章など、古典的な様式で書かれているのに、すでに後期のシュトラウスの香りがぷんぷん(笑)。でも、変ホ長調。“英雄の調性”ですが、ヴァイオリニストにとっては楽器が鳴らない調性なんですね。自分で響きを作って弾かなきゃ! という気合の入る調性です」
 シューベルトとブラームスは、スナイダーと録音したCDでも高い評価を得ているレパートリーだ。
「儚げな美しい楽章が続く大好きなシューベルトの2番のソナチネと、幸せなブラームスの2番と組み合わせ。シューベルトはもちろん、ブラームスも旋律の美しい歌曲を書いた作曲家。歌心の豊かなプログラムを感じていただけると思います」
 10年前から東京芸大准教授として学生たちを指導している。
「お弟子さんたちと一緒に勉強する中で、自分では無意識にできていたことを、何となくではなくて、きちんと言葉にして相手に伝える経験を積み重ねてきて、演奏のアプローチもちょっとずつ変わったかなと感じています」
 そうして演奏にさらに磨きがかかる。いよいよ注目度を増す円熟の音楽家だ。
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年7月号から)

7/12(日)14:00 東京文化会館(小)
7/20(月・祝)14:00 京都府立府民ホール アルティ
問:KCMチケットサービス0570-00-8255

他公演
7/5(日)町田・アートスペースオー
7/6(月)りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館
7/7(火)鵠沼・レスプリ・フランセ
7/8(水)宗次ホール
7/9(木)札幌・六花亭 ふきのとうホール
7/11(土)宗像ユリックス
7/17(金)米子市文化ホール
7/18(土)岸和田・カフェのだて
7/19(日)岸和田・むくの木ホール
他公演の情報はコジマ・コンサートマネジメント(03-5379-3733)でご確認ください。