
モーツァルトをはじめとする古典派音楽のスペシャリストとして圧倒的な存在感を放つピアニストの久元祐子。リサイタルでの演奏はもちろん、作曲家が生きていた時代の楽器とモダン楽器の弾き比べやレクチャーなど、様々な角度から楽曲の魅力を伝えてきた。そんな久元がいま力を入れているのはベートーヴェン。2027年の没後200年という節目を見据え、ピアノ・ソナタ全32曲によるリサイタルシリーズを2023年から行っている。
第3回は第2番、第7番と第11番、第12番「葬送」というプログラム。若きベートーヴェンが技術、構成ともに様々な工夫を盛り込んだ意欲作が並んでおり、演奏者には表現においても高度なものが要求される。久元のあたたかく透明感のある音色、精緻を極めた技術に裏打ちされた演奏が、楽曲にさらなる輝きをもたらすことであろう。それを支えるのは演奏家が求める音色を最大限に引き出すベーゼンドルファー280VCおよび290インペリアル。ベートーヴェンの音楽の神髄に触れられる公演となるはずだ。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2025年5月号より)
久元祐子 ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏会 Vol.3
2025.5/20(火)19:00 東京文化会館(小)
問:プロアルテムジケ03-3943-6677
https://www.proarte.jp