アンサンブル・ノマド 5月定期は打楽器とピアノがリズムを刻む!

左より:稲垣 聡 ©Chopalisz/Mariko TAYA/中川賢一 ©Shuhei NEZU/加藤訓子 ©Michiyuki Ohba/宮本典子

 ピアノの稲垣聡と中川賢一、打楽器の加藤訓子と宮本典子。アンサンブル・ノマドが誇る名手4人が満を持してのぞむ第84回定期演奏会のテーマは、「まなざし、あるいは差異の煌めき vol.1:打つ!そして弾けるリズム!!」。幾多の難曲を手中に収めてきた腕利きのメンバーたちがゲストにヴォーカル(ラップ)のDARTHREIDER(ダースレイダー)を迎え、リズムを刻むことの原点に回帰しつつ、極彩色の世界を展開する。

 プログラムは練りに練ったものだ。ケージの「クレド・イン・アス」はブラック・ユーモアも含んだ異色作で、「打つ」面白さを開眼させてくれる。武満徹の「クロス・ハッチ」はマリンバとヴィブラフォン、または2台の鍵盤楽器のための1分ほどの小品だが、洒脱な抒情味を感じることができよう。繊細な音像が光の陰影のようにきらめく三善晃の「響象 I、II 〜2台ピアノのための」では、名ピアニスト二人の至芸を堪能したい。ノマドと長きにわたり友好関係にあるアルゼンチンのアレハンドロ・ビニャオ。ノマド結成25周年記念委嘱新作でも話題になったが、今回は彼の「リフ」を取り上げる。題名はロックにおいて曲中で反復される短いフレーズを指す。この作曲家ならではのグルーヴィーな感触に満ちた作品だ。ドイツのハイナー・ゲッベルスの「サロゲート」(身代わり)では、ピアノと打楽器に声が加わり、絶え間ない応酬をくり広げるさまに注目したい。締めくくりはライヒの「カルテット」。名手4人の饗宴に乞うご期待!

文:伊藤制子
(ぶらあぼ2025年5月号より)

アンサンブル・ノマド 第84回定期演奏会
2025.5/11(日)14:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:キーノート0422-44-1165 
http://www.ensemble-nomad.com