
右:松田華音 ©Ayako Yamamoto
ピアノ独奏と比べるとオーケストレーションが弱いと言われるショパンのピアノ協奏曲。伴奏に終始しがちなオーケストラ・パートに手を入れることで、ピアノとのより活発な対話を可能にしたのが、ミハイル・プレトニョフによる新版だ。
その版によるショパンのピアノ協奏曲第1番が、プレトニョフ本人の指揮で東京フィルの定期公演に登場する。ピアノ独奏は、6歳でロシアに渡り、イワーノワやヴィルサラーゼに学んだ松田華音だ。東京フィルとの共演では、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を弾き、その重量感ある演奏は高く評価された。今回も、オーケストラと繊細なやり取りを交わしながら、スケール感を伴ったショパンを奏でてくれるだろう。
プログラムの後半は、チャイコフスキーのバレエ『眠れる森の美女』からの抜粋版が演奏される。こちらもプレトニョフ本人の手が入った特別編集版だ。2022年6月の定期公演では、同じ趣向で『白鳥の湖』を演奏した。通常演奏される組曲版とは一線を画した、彼ならではの美意識で構成された交響詩風のユニークなアプローチ。今回も、発見に満ちたチャイコフスキーを聴かせてくれるだろう。
2015年の特別客演指揮者就任以来、10年以上にわたって定期演奏会に登場し続けるプレトニョフ。ピアニストや指揮者としての実力はもちろんのこと、今回の編曲などを含め、演奏会全体をクリエイトするマルチな才能にも改めて注目したい。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2025年5月号より)
ミハイル・プレトニョフ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
第1016回 オーチャード定期演奏会
2025.5/11(日)15:00 Bunkamura オーチャードホール
第1017回 サントリー定期シリーズ
5/13(火)19:00 サントリーホール
第170回 東京オペラシティ定期シリーズ
5/19(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
https://www.tpo.or.jp