尾高忠明(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

イギリス音楽のフルコース

尾高忠明 ©Martin Richardson
尾高忠明 ©Martin Richardson
 「3月で札幌交響楽団の任期が終わりますけれど、その後はご無沙汰しているオーケストラへ呼んでいただけるので楽しみにしているんです」。昨年末にインタビューをした際、2015年の抱負をそう語ってくれた尾高忠明。その言葉通り、さっそく新日本フィルの5月定期演奏会に登場する。プログラムはお得意のイギリス音楽。それも、あちこちのオーケストラで指揮を重ねてきた、まさに十八番と言える4曲の固め打ちだ。
 2つの弦楽グループが、ルネサンスの教会音楽のように交唱するヴォーン=ウィリアムズの「タリスの主題による幻想曲」(イングランド風ノスタルジー)。結ばれない運命の2人が自分たちだけの理想郷を求めて歩む、ディーリアスの「楽園への道」(後期ロマン派音楽のハンパない陶酔感)。閉鎖的な“村社会”の中でのアウトローを主人公としたブリテンのオペラ《ピーター・グライムズ》から、人間たちにメッセージを送る海の情景をつなげた「4つの海の間奏曲」(約15分のミニ交響曲)。そして尾高が繰り返し取り上げ、日本中にこの曲の素晴らしさを知らしめたと言っていいエルガーの交響曲第1番。情に流され過ぎることがない、堅牢で威厳に満ちたカテドラルを思わせる尾高のエルガーは、完全に手の内へ入った領域にあり、未体験の方にはぜひ聴いていただきたい1曲だ。
 ハーディングやメッツマッハーほか多彩な指揮者とサウンドを作り上げてきた、新日本フィルの演奏にも期待大!
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年5月号から)

#541 定期演奏会
5/22(金)19:15、5/23(土)14:00 
すみだトリフォニーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 
http://www.njp.or.jp