秋山和慶指揮者生活60周年記念公演。ブックレットは功績を振り返り、さらなる大成を確信する内容。演奏もまさに円熟の境地。豊潤かつ芳醇なブルックナー。しなやかで温もりある音色。神々しくも雄渾な全奏。思わせぶりな身振りは皆無。力みがなく、どこまでも自然体。偉大な節目であっても、これからも続く活動の通過点に過ぎないと言わんばかりに。そして当盤を聴くタイミングに飛び込んだ、秋山和慶急逝の報。追悼盤となってしまった記念盤。秋山の「通過点」のはるかな高みを示す、一点の曇りなき晴朗な響きに包まれ、もう二度と見られない、あの美しい指揮姿を脳裏に浮かべる。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2025年3月号より)
【information】
SACD『ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」 /秋山和慶&東響』
ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」(1878/80年稿 ノヴァーク版)
秋山和慶(指揮)
東京交響楽団
収録:2024年9月、サントリーホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00866 ¥3850(税込)