五嶋 龍(ヴァイオリン)

輝き続ける2つの巨星のようなソナタをメインに

©E.Miyoshi

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 2014年にはケント・ナガノ指揮モントリオール交響楽団の来日ツアーでソリストを務め、切れ味鋭い妙技で日本のファンを魅了したヴァイオリンの五嶋龍。今年の5月には約2年半ぶりとなる待望のリサイタル・ツアーを行う。今回のメインは、ベートーヴェン「クロイツェル」とフランクのソナタ。ドイツとフランスで現れた永遠に輝き続ける2つの星のような両傑作を一つの公演で並べて弾くプログラムは大変珍しい。
「僕は名曲好きなので(笑)、テーマは特に考えず、日本でずっと弾いてみたかったこの2曲を直感的に選びました。カーネギーホールで既にこのプログラムを演奏していて、その時は一般にあまり馴染みのない作品(武満徹「悲歌」)と技巧的かつメロディックなヴィエニャフスキの変奏曲をカップリングしました。今回のツアーも同じような路線になると思います。味のまったく異なる2つのメインを中心に、バラエティ豊かなコース料理をお楽しみください」
 「クロイツェル」は、ある理由から、繰り返しなしで弾くことが多いという。
「クラシック音楽に縁遠い友人がこの作品を初めて聴くと、皆口を揃えて酷評する。構成がギクシャクしていて、主題の切り替えのサプライズ的な部分が、感情の流れに急ブレーキがかかるように聴こえるんでしょうね。でも、この作品は協奏曲のように重厚でカッコいい傑作。それをわかりやすくプレゼンテーションする手段の一つとして、繰り返しは避ける。その方がより心地良く聴くことができると思うのです」
 一方、フランス系ヴァイオリン・ソナタの最高傑作として名高いフランク。同郷出身の大ヴァイオリニスト、イザイの結婚を祝って書かれたこの作品に込められた意図を、五嶋は次のように分析する。
「僕はこの作品が“結婚祝い”ではなくて、結婚生活の流れを音楽で説明した“忠告”だと思うんです。第1楽章は新婚旅行で、夢のように幸せな気分だから相手の嫌なところはひとつも見えない(笑)。でも、第2楽章で結婚生活が始まると現実が色々わかってきて、喧嘩をするようになり、第3楽章では会話もなくなるほど深刻に。ピアノとヴァイオリンが別々に演奏する導入部分はその象徴だと思います。その後、楽章の途中から会話が少しずつ始まり、第1楽章と第2楽章の主題を回想しながら、『色々あったけど、もう一度2人で頑張ってみよう』という雰囲気になっていき、最後は『どうなるのかな』と含みを残して終わる。そして第4楽章は、年齢を重ね、夫婦として成熟した彼らが元気一杯、幸せに暮らしている。フランクは、そんなことをイザイに伝えたかったのではないでしょうか」
 そして今回のツアーでもうひとつ注目して欲しいのが使用楽器。日本音楽財団より貸与された1722年製のストラディヴァリウス「ジュピター」だ。
「音の抜けがよくて、聴き心地のよい音色が自然に出てくる。弾き手と聴衆に一体感を提供する最高のヴァイオリンです!」
取材・文:渡辺謙太郎
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年2月号から)

五嶋 龍ヴァイオリン・リサイタル2015
5/20(水)19:00 ノバホール(つくば)
5/26(火)19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
5/27(水)19:00 サントリーホール
問:イープラス0570-06-9939 
http://eplus.jp/ryugoto/

全国公演についてはツアーオフィシャルサイト(http://ryugoto.jp/)をご覧ください。