愛知室内オーケストラの新シーズン開幕はレジェンド舘野泉を迎えて

左:山下一史 ©ai ueda
右:舘野 泉 ©Akira Muto

 愛知室内オーケストラ(ACO)の20 25/26シーズンは4月18日、愛知県芸術劇場 コンサートホールの第86回定期演奏会で幕を開ける。指揮は22年4月からACO初代音楽監督を務める山下一史(1961〜)、ピアノ独奏に「左手の巨匠」の舘野泉(1936〜)を迎える。

 桐朋学園からベルリン芸術大学に留学した山下は1985〜89年、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団で終身指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンが亡くなるまでアシスタントを務めて以来、ドイツ=オーストリア音楽をレパートリーの柱に据えてきた。ACOでも客演時代のR.シュトラウス、就任披露演奏会のシューマン、ブラームスなどドイツ・ロマン派を皮切りとして、次第に古典派のモーツァルト、ベートーヴェンへと歩を進めてきた。長期の明確な育成方針を受け、ACOのドイツ音楽への適性も一貫して深まった。

 4月の第86回定期ではベートーヴェンの交響曲第1&7番の2曲をとり上げる。J.S.バッハの死後わずか50年で書かれ新時代の到来を告げた最初の交響曲と、ワーグナーが後に「舞踏の神化」と称賛した「ベト7」の対比は聴きものだろう。

 脳溢血の後遺症によって2003年以降、左手のピアニストとして活動する舘野は24年11月に米寿(88歳)を祝い、深く澄み切った円熟の極みにある。左手のための新作を数多く委嘱初演、12年から日本に住むアルゼンチンの作曲家パブロ・エスカンデ(1971〜)とは特に親しく、今回は「左手のためのピアノ協奏曲『アンティポダス』」(2014)の再演に臨む。アンティポダスは「対蹠地」の意味で、地球上の正反対に位置する日本とアルゼンチンを示している。
文:池田卓夫
(ぶらあぼ2025年1月号より)

山下一史(指揮) 愛知室内オーケストラ
第86回 定期演奏会
2025.4/18(金)18:45 愛知県芸術劇場 コンサートホール
2025.1/24(金)発売
問:愛知室内オーケストラ052-211-9895
https://www.ac-orchestra.com