いちだんと豪華な顔ぶれがそろったアニヴァーサリー
木のぬくもりがやさしい軽井沢大賀ホール。JR軽井沢駅から数分、国道18号沿いの矢ケ崎公園の池畔に佇む。今年開館10周年を迎え、2005年4月のグランドオープンを飾った『春の音楽祭』も10回目の開催。豪華な顔ぶれが高原のゴールデンウィークを彩る。
音楽祭の幕開けは、彗星のように現れた新鋭アンドレア・バッティストーニと東京フィルハーモニー交響楽団によるチャイコフスキーの交響曲第5番。2月の東京二期会《リゴレット》の快演も記憶に新しいバッティストーニは、1987年生まれという若さながらすでにミラノ・スカラ座はじめヨーロッパの主要劇場の指揮台を次々と制覇している超注目株。東京フィルと録音した2枚のCDも大評判だ。4月に同楽団の首席客演指揮者に就任して初めての共演がこの軽井沢。両者の門出を祝う公演でもある。
続く5月2日は、病気療養からの復帰を日本中のファンが歓呼して迎えている井上道義が、手兵のオーケストラ・アンサンブル金沢を率いて登場。両者はこの音楽祭の常連だ。曲目はバロックと古典。コンサートマスターのサイモン・ブレンディスがソロを務めるヴィヴァルディ「四季」は指揮者なしで、通奏低音に曽根麻矢子(チェンバロ)が加わる。ハイドンは、アンサンブル金沢の中心的なレパートリーのひとつ。交響曲第96番「奇跡」は、人気では「ザロモン・セット」の他の有名曲に譲るかもしれないが、通好みの名曲だ。他にヘンデル「水上の音楽」抜粋も。
5月4日には東京フィルが再登場。ホールを軽井沢町に寄贈したソニーの故・大賀典雄は、同楽団の会長などを務め、この音楽祭でも毎年自らタクトをとっていた。そんなつながりもあり、東京フィルはホスト的な存在で毎年出演している。今回は、10年前の同ホールのグランドオープンでベートーヴェンの「田園」を振った桂冠名誉指揮者チョン・ミョンフンが登場。モーツァルトのピアノ協奏曲第23番を彼が弾き振りするという聴き逃せない機会だ。メインはベートーヴェンの交響曲第7番。
ほかにも、初来日から60年目となるウィーン少年合唱団(5/3)。北陸新幹線開通を祝って東京と金沢の若手奏者たちによる弦楽合奏(5/5)。人気が高まる一方のアリス=紗良・オット(ピアノ)(5/17)など、聴きたくなる公演が目白押しだ。GWの軽井沢は、遅い春の真っ盛り。梅も桜も桃も一斉に花を咲かせる美しい季節を、贅沢なラインナップの音楽とともに満喫したい。
文:宮本 明
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年4月号から)
アンドレア・バッティストーニ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団
4/29(水・祝)16:00
井上道義(指揮) オーケストラ・アンサンブル金沢 5/2(土)15:00
ウィーン少年合唱団 5/3(日・祝)15:00
チョン・ミョンフン(指揮/ピアノ) 東京フィルハーモニー交響楽団 5/4(月・祝)15:30
軽井沢大賀ホールチェンバーコンサート2015 5/5(火・祝)15:00
アリス=紗良・オット(ピアノ) 5/17(日)14:00
軽井沢大賀ホール
問 軽井沢大賀ホールチケットサービス0267-31-5555
http://www.ohgahall.or.jp
※音楽祭の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。