タイトルとなったジョビンの「フェリシダージ」、編曲の始まり方が意表を突いているのだが、おなじみのメロディへと接続していくときのリズム感やムードの転換がクールだ。楽器を開放的に鳴らし抒情や郷愁をしっかりと捉えているだけではなく、このクールさ、センスがあちらこちらで顔を出し、胸にじわじわと染みてくる。ちぐはぐにもなりかねない多彩な選曲を小暮の個性がまとめているのだ。「コユンババ」(ドメニコーニ)終楽章の打楽器のように空気を震わせるリズム、「神楽歌」の〈舞(Danza)〉(大坪純平)の技のキレなど、テクニカルにも秀でており、ギターの醍醐味を味わえる一枚。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2024年10月号より)
【information】
CD『フェリシダージ/小暮浩史』
ジョビン(R.ディアンス編):フェリシダージ/リョベート:「カタルーニャ民謡曲集」より/バリオス:大聖堂、フリア・フロリダ/ドメニコーニ:コユンババ/ヨーク:ムーンタン/大坪純平:ギターのための“神楽歌”、タップ・スラップ/閑喜弦介:スプレッド・アウェイ 他
小暮浩史(ギター)
マイスター・ミュージック
MM-4533 ¥3520(税込)