横山幸雄 ピアノ・リサイタル ベートーヴェン・プラス Vol.10

12曲のソナタでたどる楽聖の足跡

©Hiro Ferrari

 横山幸雄にとって活動の主軸となる作曲家の一人、ベートーヴェン。毎秋、そんなベートーヴェンと関連する作曲家をあわせることでその魅力を掘り下げていくシリーズ「ベートーヴェン・プラス」も、第10回の節目の開催を迎える。そこで今回横山が取り上げるのは、“生誕250年の2020年と、没後200年にあたる2027年のちょうど真ん中”というタイミングもあって、ベートーヴェンに真っ直ぐに向き合うプログラムとなった。

 その内容は、名曲として広く親しまれ、タイトルで呼ばれるピアノ・ソナタ10曲と、記念すべき第1番、そしてピアノ音楽の究極に上り詰めた第32番の計12曲のソナタを通じ、ベートーヴェン20代半ばから50代半ばまでの音楽人生をたどるというもの。午前10時半開演、終演は夕方の16時半の5部構成。凝縮してもなおボリュームたっぷりになってしまうベートーヴェンの魅力を、余すところなく届ける内容だ。ありそうでなかったというよりは、無尽蔵のエネルギーを持つ横山でなくてはできない企画といえる。

 弾力のあるみずみずしいタッチで奏でられる若き日のソナタ、ドラマティックかつ奇を衒うことのない音楽性が生きる名曲の数々、美しい音と洗練された感性が発揮される最後のソナタで、横山ならではの表現とテクニックを存分に味わうことができるだろう。記念年でなくても、たっぷり1日ベートーヴェンの音楽に浸ることができる機会。前向きなパワーを補給できそうだ。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2024年9月号より)

2024.9/22(日・祝)10:30 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212 
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