毎年リリースされる藤倉大の作品集、第10弾は2枚組約150分！ しかも全10曲のどれもが面白い。各曲に共通するキーワードは“遊び心”と“エモーション”ではないか。リラックスした状態で浮かぶアイディアに適切な形を与え、奏者と対話をしながら楽器のイメージを探っていく。三味線、尺八、チューバ、箏のような楽器も、藤倉というフィルタを通すと新たな魅力を帯びて輝きはじめ、独奏曲はしばしば協奏曲にまで膨らみ、その過程で新たな化学反応が起こる。ミキシングやマスタリングまで自ら行い、曲の胚胎から聴取まで、プロセスの全てを楽しみつつ取り組んでいるのが伝わってくるアルバムだ。
文：江藤光紀
（ぶらあぼ2024年9月号より）
【information】
SACD『ウェイヴァリング・ワールド／藤倉大』
藤倉大：ウェイヴァリング・ワールド、三味線協奏曲（オーケストラ・ヴァージョン）、尺八協奏曲（アンサンブル・ヴァージョン）、チューバ協奏曲（アンサンブル・ヴァージョン）、ゆりいろ（箏協奏曲第2番） 他
本條秀慈郎（三味線、声） 小濱明人（尺八） 橋本晋哉（チューバ） 木村麻耶（二十五絃箏、声） 他
ソニーミュージック
SICX 10022～3（2枚組） ￥4950（税込）