日本バレエ協会『コッペリア』

ヴィハレフ版で舞う実力派3キャストの魅力

 古典バレエと一口に言っても、その奥は深い。時代とともに音楽や構成の見直しが行われ、さらに振付家たちの独自の解釈や思い入れが加わって、ひとつの作品にもさまざまなバージョンが存在するからだ。現代の感覚に合わせて改訂された作品も楽しいが、もしも作品が初演された時代にタイムスリップできたら、どんな発見があるのだろう?
 そんなバレエ・ファンの思いに応えてくれそうなのが、日本バレエ協会の『コッペリア』だ。振付のセルゲイ・ヴィハレフは、多くの有名作品の復刻に情熱を燃やし、成果を挙げてきた気鋭の振付家。この『コッペリア』は、パリ・オペラ座での初演から14年後の1884年にマリウス・プティパがロシアで上演したバージョンを出来る限り忠実に再現した。これによってロシアの舞台芸術賞である「黄金のマスク賞」を受賞した。初演版からカットされた踊りも含まれているという〈ヴィハレフ復刻によるプティパ版〉の『コッペリア』が興味をそそるのはもちろんだが、これを観ることで他のバレエ団の『コッペリア』もより面白く感じられるのでは、という欲張りな期待も盛り上がる。
 主役スワニルダとフランツは、下村由理恵と芳賀望、法村珠里と浅田良和、志賀育恵と橋本直樹という、いずれも魅力的な配役だ。コッペリウスら脇役も実力者が固める。都民芸術フェスティバル参加公演のため、比較的低価格なのも嬉しい。この機会にぜひ劇場へ足を運びたい。
文:新藤弘子
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年2月号から)

3/7(土)18:00、3/8(日)13:30/18:00 東京文化会館
問:日本バレエ協会03-5437-0372 
http://www.j-b-a.or.jp