野尻多佳子 ピアノリサイタル ‘Eternal’

いくつもの世界を一夜で体感


 ソロ、室内楽と多方面にわたる演奏活動を行うピアニストの野尻多佳子。これまで、趣向を凝らしたテーマによるリサイタルや録音を重ねてきた彼女が、今回、「Eternal(永遠)」をテーマに、時代、地域ともさまざまな作曲家の作品を取り上げる。
 冒頭はスペインから、詩情にあふれるモンポウで幕を開ける。そしてアメリカから、同じころに作曲されたバーバーのソナタと、一転して力強い響きと構造美を持つ音楽を置く。続いては古典的なドイツ、オーストリア音楽から。静かで厳格なシューベルトの「3つの小品」D.946第2番で空気を整えた後、最後に演奏されるのは、まさに輝き続ける永遠の名作、ベートーヴェンのソナタ第32番。ベートーヴェンに長きにわたり取り組み続けている野尻が、ピアノ音楽の大きな宇宙の締めくくりとなる作品に挑む。
 繊細な表現力で定評のある彼女のピアノが、この多岐にわたる作品を描き分ける。一夜にしていくつもの世界を体感できる演奏会となりそうだ。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年1月号から)

2015.2/28(土)19:00 紀尾井ホール
問:プロアルテムジケ03-3943-6677 
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