新世代ギタリストのトップを走る朴の、デビュー14年目にして初のオール・バッハ・アルバム。完璧なテクニックと美しい音色はもとより、流麗なフレージングや自然な呼吸感、緻密な構築力に感心させられる演奏だ。彼女の特長でもあるギターらしからぬスムーズな運びと、ギターならではの音質的な妙味を兼ね備えている点が、実に魅力的。特に「前奏曲、フーガとアレグロ」の速い動きや、無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番のオリジナルとは異なる新鮮さに魅せられるし、「シャコンヌ」の抑揚や構成も見事だ。ナチュラルなバッハ音楽として万人が楽しめる1枚。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2024年6月号より)
【information】
CD『BACH/朴葵姫』
J.S.バッハ:前奏曲 フーガとアレグロ、無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番、無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番より「シャコンヌ」
朴葵姫(ギター)
日本コロムビア
COCQ-85624 ¥3500(税込)