藤岡幸夫(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

ヴォーン・ウィリアムズ「ロンドン」待望の上演

左:藤岡幸夫 ©青柳 聡
右:福間洸太朗 ©T.Shimmura

 英国王立ノーザン音楽大学を卒業し同国のオケを数多く振ってきた藤岡幸夫にとって、イギリス音楽は文字通りホームグラウンドだ。そしてイギリスには20世紀になって書かれた交響曲がたくさんある。19世紀の伝統を踏まえオーケストラの醍醐味をたっぷりと味わわせてくれるこれらの作品の紹介に、彼は情熱を注いできた。

 そんな藤岡が首席客演指揮者を務める東京シティ・フィルの5月定期でヴォーン・ウィリアムズの「ロンドン交響曲」を聴かせてくれる。コロナで流れた企画のリベンジだ。朝焼けのような美しい序奏の後ダイナミックに展開する第1楽章に、抒情的でセンチメンタルな緩徐楽章、夜想曲調のスケルツォが続き、終楽章は苦悩の行進曲となるが、鐘の音が遠くに聞こえると夜のとばりが下りるように曲を閉じる。50分近くかかる大曲だが、オケがよく鳴るうえに耳になじむ民謡風のメロディも随所に出てくる。

 演奏会冒頭には同じくイギリスの作曲家ディーリアスの「夜明け前の歌」を置いた。慎ましい曲調の中にイギリス音楽の粋が顔を出す。

 間に挟まれるのはリストのピアノ協奏曲第2番だ。ラプソディックに展開されるこの曲で独奏を務めるのは福間洸太朗。誠実な性格が表れた演奏もさることながら、コンサートのプロデュースや的確で分かりやすい楽曲分析の動画配信など活動の幅も着実に広げ、円熟味を増している。

 全力で作品にぶつかっていくパッション型の藤岡、そのリードに熱く応える東京シティ・フィルと、どんな風景を見せてくれるのだろうか。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2024年4月号より)

第370回 定期演奏会 
2024.5/11(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
https://www.cityphil.jp