「Opus One」レーベルのデビュー盤から早4年。古海行子は憧れを抱き続けてきたリストの長大なピアノ・ソナタに向き合った。長年の思いの丈を、この録音にしっかりと結実させようとする意志を感じる演奏だ。緊張感、甘美さ、豪快さなど、このソナタが持つ多面的な様相を丁寧に描き出し、なおかつドライブ感のある演奏で一気に聴かせる。「愛の夢」第3番は、歌声のようなニュアンスの変化に富む。2018年高松国際ピアノコンクールで日本人初の優勝を飾り、22年ダブリン国際ピアノコンクールで第2位に輝く実力派。今後の展開がさらに楽しみになる一枚だ。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2024年1月号より)