類稀な美音をもつ名手による16年ぶりのソロリサイタル
ソロでの来日は2008年以来とだいぶ時間が経ってしまったが、その時の印象もいまだ鮮やかなアウグスティン・ハーデリヒが、無伴奏曲だけを集めたリサイタルで日本に戻ってくる。2006年インディアナポリス国際ヴァイオリンコンクールで優勝した時は、深い音楽性に満ちた彼の演奏が世界的な注目を集め、その2年後に日本で行われたリサイタルでも、作品の背後の世界までも透徹した解釈で、数々の名曲の新しい魅力を教えてくれた。
コンクール優勝後は世界各地のオーケストラから引く手あまたで、日本でも2015年にワイラースタイン指揮NHK交響楽団と共演した。今回の久々のリサイタルでは、J.S.バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第3番、イザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番などの傑作に加え、コールリッジ=テイラー・パーキンソン、デイヴィッド・ラングという現代作曲家の作品を取り上げるのも注目だ。
ドイツ人の両親のもと1984年にイタリアで生まれた彼は、99年に全身に大やけどを負ったが、20回を超える手術と過酷なリハビリを経て、1年後には復帰し、ジュリアード音楽院でジョエル・スミルノフに学んだ。インディアナポリス国際優勝後は、デュティユーのヴァイオリン協奏曲「夢の樹」の録音で2016年のグラミー賞を受賞するなど、録音活動にも積極的だ。深い音楽性と高度なテクニックに加え、幅広い視野を持つハーデリヒの久々のリサイタルは2024年初頭の大きな話題となるだろう。
文:片桐卓也
(ぶらあぼ2023年12月号より)
2024.2/18(日)14:00 紀尾井ホール
問:紀尾井ホールウェブチケット webticket@kioi-hall.or.jp
https://kioihall.jp