エクス・ノーヴォ vol.18 アレッサンドロ・ストラデッラ オラトリオ《洗礼者ヨハネ》

波乱の生涯を送った作曲家の知られざる傑作を豪華布陣で上演!

 圧倒的な音楽センスで絶賛されながらも男女問題で追われる身となり、刺客の手にかかり早世した17世紀イタリアの天才ストラデッラ。その波乱すぎる後半生が19世紀に複数のオペラで扱われ有名になった一方、作曲業績そのものは長く見過ごされていた。

 近年ヨーロッパで急速に復権が進む中、代表作の一つと言ってよい劇的起伏たっぷりのオラトリオ《洗礼者ヨハネ》を最高の布陣で堪能できる機会が訪れるとは!  同作の興行公演は日本初、しかもイタリアでの古楽経験豊かな福島康晴の指揮となれば聴き逃がせない。同じくイタリア古楽に造詣の深いチェロ懸田貴嗣やチェンバロ渡邊孝はじめ、通奏低音はハープやテオルボも交えた17世紀流の豪華さで、ヴァイオリンよりヴィオラの員数が多いユニークな合奏には、古楽界を賑わす実力派プレイヤーが続々。声楽曲でも弦楽対比を巧みに活かしたストラデッラ作品では何より頼もしい布陣だ。歌手勢も民衆役まで選び抜かれ、残酷な悲運の主人公ヨハネを演じるのは近年バロック・オペラで大活躍のカウンターテナー中嶋俊晴。阿部早希子のへロディアとその娘(いわゆるサロメ)に佐藤裕希恵という配役も、迫真の演技力が高度な歌唱力と結びつく驚きを予感させる。

 指揮の福島自身が、このところ16世紀末〜17世紀前・中盤のイタリア劇音楽の実演を独唱者としても賑わせてきた末の好企画。「ラ・フォリア」のコレッリさえ若造だった頃のローマを賑わせた才人の至芸、バロック式教会の内陣も連想できそうな東京文化会館小ホールという絶妙の会場でじっくり味わいたい。
文:白沢達生
(ぶらあぼ2023年10月号より)

2023.11/13(月)19:00 東京文化会館(小)
問:ムジカキアラ03-6431-8186
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