2022年9月に52歳間近で逝去したラルス・フォークトが、その前年に、20年から音楽監督を務めるパリ室内管を弾き振りした1枚。闘病中の録音という背景や後の別れを知って聴くと、第9番第2楽章および第24番のハ短調の音楽がよりいっそう胸に沁みるのは確かだし、絶妙なタッチとニュアンスをもって表出される前者の哀感、第24番第2楽章の“長調の清澄な哀しみ”も実に感動的だ。ただし全体を見れば、あくまでこれはモダン・ピアノの美感を生かしたシンフォニックかつ精緻なモーツァルト。円熟のピアニズムが光る生気に富んだ音楽は、一聴の価値大!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2023年10月号より)
【information】
CD『モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番&第24番/ラルス・フォークト&パリ室内管』
モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番「ジュノム」、同第24番
ラルス・フォークト(ピアノ/指揮)
パリ室内管弦楽団
ONDINE/ナクソス・ジャパン
NYCX-10416 ¥2970(税込)