1989年から東京都交響楽団の首席ファゴット奏者を務める名手、岡本正之による19世紀前半ロマン派の作品集。柔らかな木の音色が持つどこか朴訥としたキャラクターと時折見せる敏捷性…この楽器が持つそんな真の実力を活かすことができる、優れたソリストを想定して書かれたウェーバーやダヴィッド、ヤコビ、カリヴォダなどの作品が目玉。しかし、たとえ他の楽器のために書かれた作品であっても、この楽器でしか表現し得ない魅力に溢れたシューマンの(元はホルンのための)「アダージョとアレグロ」やブラームス〈ひばりの歌〉も聴き逃せない。
文:東端哲也
(ぶらあぼ2023年10月号より)
【information】
CD『アダージョとアレグロ ファゴットとピアノによる盛期ロマン派名曲選/岡本正之&横山希』
シューマン:アダージョとアレグロ、3つのロマンス/ウェーバー:アンダンテとハンガリー風ロンド/ダヴィッド:コンチェルティーノ/ヤコビ:序奏とポロネーズ/カリヴォダ:モルソー・ド・サロン/ブラームス:ひばりの歌
岡本正之(ファゴット)
横山希(ピアノ)
コジマ録音
ALCD-3131 ¥3300(税込)