飯森範親(指揮) いずみシンフォニエッタ大阪
50回記念—生誕60,70,80,90,100年特集

アニヴァーサリーを迎える作曲家の音楽とともに祝う記念定期

 いずみシンフォニエッタ大阪(ISO)が第50回定期演奏会を開く。節目の開催を記念して、今年生誕70、80、90、100年を迎える作曲家を取り上げる。まず、生誕100年のリゲティ「ミステリー・オブ・マカーブル」。彼の唯一のオペラ《グラン・マカーブル》の秘密警察長官ゲポポのアリアをトランペット独奏に編曲したもの。複雑怪奇な問題作を象徴するような阿鼻叫喚のアリアで、超絶技巧が連続する。独奏の菊本和昭は「トランペット奏者として気になる作品で、遂にこの作品に挑む時が来たか」と意気込みを語る。生誕90年のペンデレツキ「弦楽のためのシンフォニエッタ」は、各楽器のソロも活躍して、ISOの優れた弦楽セクションが十分に楽しめる。

 80歳になる池辺晋一郎の「降り注ぐ…」は、ISOが2005年に初演した曲。しずくが降り注ぐような下降音形が特徴的で、初演したISO常任指揮者の飯森範親は「現代音楽には珍しい反復記号が2、3ヵ所あり、そこが聴きどころ」という。そして今年70歳の西村朗による三重協奏曲「胡蝶夢」の新作初演。西村は「荘子の『胡蝶の夢』を下敷きに、蝶をクラリネット(上田希)、人間をヴァイオリン(小栗まち絵)、人間の本性をハープ(篠﨑和子)が描く。自伝的な要素もあり、作曲家の自分と実人生の自分、夢と現実の境界が次第に曖昧になってゆく」と創作意図を語る。3つの独奏楽器はISOの各セクションの代表でもあり、ISOの創設者で音楽監督の西村が、この20年以上にわたる活動の集大成と位置付ける新作への期待は、おおいに高まる。指揮者の飯森は今年60歳になり、これで50から100までの円環は閉じる。単なる数字遊びをはるかに超えた意義深い演奏会となるだろう。
文:横原千史
(ぶらあぼ2023年7月号より)

第50回 定期演奏会 
2023.7/8(土)16:00 大阪/住友生命いずみホール
問:住友生命いずみホールチケットセンター06-6944-1188 
https://www.izumihall.jp