古典四重奏団が、ついに、ベートーヴェン全曲を初リリース。特典のピアノ・ソナタ編曲や書籍同然のブックレットも凄いが、とにかく演奏に脱帽。慎重に録音を重ね、独自の澄んだトーンを土台に、研ぎ澄まされたライブ感も残しつつ、なにより自然体。特に後期作品の脱力ぶりは比類がない。奇をてらわず、楽曲中の仕掛けや斬新さを殊更に強調することもない。しかし、じっくり聴けば、必要なもの、求めるものはすべて込められている。作曲者が音楽の力を信頼したように、四人は作品自体の力を信じ、それを聴くわたしたちのことも信じている。まさしく唯一無二、愛好家必携の全集。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2023年7月号より)
【information】
CD『ベートーヴェン:弦楽四重奏曲全集/古典四重奏団』
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第1番〜第16番、同第13番より第6楽章(第2稿)
古典四重奏団
【川原千真 花崎淳生(以上ヴァイオリン) 三輪真樹(ヴィオラ) 田崎瑞博(チェロ)】
CRÉATION
CRT-2301〜2311(11枚組) ¥16500(税込)